一棟物空き物件を考える

今日は一棟物の空室物件の評価についてお話します。利回りはテナント入居があって初めて計算できます。最近の売却物件の中で多いのは「満室予想利回り何%」という物件です。 このような物件は何の手も加えずに満室になることはありません。リフォーム等の費用も発生します。それだけでテナントが決まればいいほうで、なかなか決まらない物件が多々あります。決まらない理由を検討しますと、その物件が時代のニーズに合っていないというのがほとんどです。それではどうすればよいのかといいますと、自分でそのニーズに合わせられる力量をお持ちでない方はこの手の物件に手を出さないことです。現在では「売り」より「買い」のニーズの方が多いため、いつまでも買いたい条件を満たす物件に巡り合えない焦りから、その力量がなくともこの手の物件に手を出す人が多いのです。結果は「思惑はずれ」ということになってしまいます。この手の物件はテナントが入らなくとも、ご自身に利回り以外の別目的があり、それを満足させられるという場合に買いを検討するのがよいかと思います。

実際売られている状況そのままで、「優良物件」といえるものは数少なくなってきました。そこで自ら優良物件を作るという作業が必要となってきます。テナントの入居していない物件を自ら料理し、満室状態にできる知恵と行動力と資金をもって、自ら優良物件を作るのです。でもどんな物件でもこの作業をすれば優良物件になるわけではありません。まずは「物件を見る目」が必要です。そこでは立地の将来性を重要視します。言い換えれば資産価値です。リスクを取るわけですから、目的成就の暁はそのリスクを上回る満足感が期待できないとそこに踏み込むべきではありません。もう少しその作業方法についてお話しましょう。

 この物件は大阪都心部の空室ビルです。4階建ての古ビルです。エレベーターはありません。敷地面積は20坪以下です。用途容積は商業地域の600%のエリアです。大通りに面しています。この物件の購入予定者はたぶん自己使用の法人か、不動産投資家です。前者の場合で、この物件の近所で営業していて、賃料を払ってビルを借りるよりここらで自社ビルでも持とうかと検討しているところがありましたら、少し高いなと感じる値段でも購入することはあります。でも不動産投資家はテナント入居の見込みが立たないと買いづらいでしょう。立地からどんな職種のテナントが入るのか、賃料はいくらか、一棟貸しにするのか、フロアー貸しにするのか、リノベーションして上層階はマンションに改修するほうがいいのか、そのときの費用はいくらか、売却したとき投資額の回収はできるか、いつまで所有するのか、解体費用はいかほどか、その時期はいつごろか、等々検討の上で物件価額の査定に入ります。競合相手が現れなければ、またこの物件で融資を受けることは難しいでしょうから自己資金で買える方が購入対象者になります。ですから少々の指値を入れても購入できるチャンスはあります。テナント活動を事前にして契約前にいい出店条件を頂いていたら、その判断も早くできるでしょうが、その時間がないときには判断に迷います。でも物件を見て気に入った場合、たとえ購入できなくともこの金額以上では仕方なしと、あきらめのつくぐらいの値段を先ほどの検討後に指値するしかありません。そのとき業者さんが転売目的で購入するかもと思える物件であれば、その業者さんが入れる金額よりも高くないといけません。これが一つの目安です。実はこれに似た物件をこれから検討することになっています。どんな結果になるか、じっくり検討していきますよ。  和合 実